漢字基本字形・正字 basechar・authen

暫定正字明朝

フォントの槪要

 暫定正字明朝は正漢字、いはゆる舊(旧)漢字による明朝體フォントです。TrueTypeフォントのインストール可能なOSでお使ひ下さい。
 日本語フォントでは、一部の字形が新字しか收錄されてゐない事が一般的ですが、このフォントを使用すると、可能な限り所謂康熙字典體による漢字を出力します。

特徴

 約六萬字以上を收錄する「IPAmj明朝」を基に、、JIS第一・第二水準の漢字の基本字形を、このフォントの收錄する字形の範圍で、所謂康熙字典體(以下「正字」)に割當てし直したフォントです。JIS第一・第二水準の範圍で例示字形が新字しかないものについて、正字に割り當ててゐます。
 ただし、「桜」と「櫻」など、JIS第一・第二水準の範圍で新字と正字の兩方があるものについては、前者はそのまま殘してゐます。
 なほ、フォントの文字デザインは國語問題協議會や文字文化協會が行つたものではありません。「独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)」(※現在は「文字情報技術促進協議会」がフォントを管理)にフォントを納入した業者がデザインしてゐます。この厖大な文字デザインなくしてこのフォントは生まれませんでした。こちらでは飽くまでも「文字コードと實際の文字の割附け表」を變更したに過ぎません。

 この「割附け表」を變更するにあたり、所謂康熙字典體としてどの字形を採用するかは、下記の參考文獻およびソフトウェアを參考にしてゐます。
『康熙字典(同文書局原版)』
『表外漢字字体表』國語審議會
『平成漢字基本字形集』文字文化協會發行
『学研漢和大字典』藤堂明保編、第32刷
『今昔文字鏡』エーアイ・ネット
『文字鏡契冲明朝』有限会社申申閣(かな漢字變換ソフト『契冲』附屬フォント)

見本


使用條件

 「暫定正字明朝」フォントを、基となつたフォントのライセンスと同じ「IPAフォントライセンスv1.0」の元で公開します。
 この使用條件の範圍內であれば、改變・再配布・商用利用等も含め、無償で自由にご利用いただけます。

IPAmj明朝に戾す方法 (IPAフォントライセンスv1.0 第3條1項 (2))

 「IPAmj明朝」を「文字情報技術促進協議会」の下記アドレスからダウンロードし、インストールしてください。
 https://moji.or.jp/mojikiban/font/

改版履歷

 Ver. 0.002(2022/11/03) 「兼」の上の點を「八」ではなく「〃」の形に、「簡」の「日」の部分󠄁を「月󠄁」に(この版は國語問題協議會會報『國語國字 第218號』の組版でも使用)
 Ver. 0.001(2022/10/10) 初版(非公開)
 本フォントは「暫定版」です。
 新しい版で「文字コードと實際の文字との對應誤り」等を變更する可能性がございますので、ご注意下さい。

ダウンロード

暫定正字明朝 Ver.0.002(ZIPファイル)
ダウンロード後、ZIPファイルを展開し、ZanteiSeijiMincho.ttf をインストールして下さい。

質問箱

Q.「正字」と「康熙字典體」は同じ意味ですか。
A.活字體についてはほぼ近いのですが、微妙に異なります。康熙字典では康煕帝の諱の「玄」「燁」を、そのままの漢字で載せると畏れ多いとの事で、最後の一畫を省略した字體が載せられました(玄を含む漢字も同樣)。また、「戶」を含む漢字が字によつて字形がまちまちである等、字形の不統一の問題もありました。「それらの問題をある程度直してゐるものの、おほむね康熙字典體を基にしてゐる字體」を「所謂康熙字典體」と呼びます。「正字」または「正漢字」は、傳統的な漢字の基本字形(略字ではない正式な字)を意味しますが、活字體の場合は「所謂康熙字典體」がその目安となつてゐます。なほ、「唯一正しい正字の字形」があるのではなく、「許容範圍內なら正しい字形」です。

Q.このフォントは、手書きで「正字」を書く時のお手本になりますか。
A.康熙字典體は手書きの楷書體の規範ではありません。康熙字典の前文は楷書ですが、康熙字典體ではなく、たとへば之繞は二點之繞ではなく一點にくねる形の傳統的な楷書の字體です。所謂康熙字典體と傳統的な楷書の字形は、一致するものもあれば異なるものもあり、たとへば「眞」「來」「靑」「增」などは活字體と異なる書き方が一般的です。なほ、活字體のまま手書きすることが必ずしも誤りとは限らず、たとへば戰前の學校教科書の教科書體は、傳統的な楷書の字形の事もあれば、活字體を楷書化した字形の事もあります。正字を傳統的な楷書で書く時の參考資料としては、たとへば『楷行草 筆順・字体字典』江守賢治、三省堂があります。餘談ですが、楷書體フォントで「常用漢字表の字は一點にくねる形の之繞だが、表外字は二點にくねる形の之繞」といふのは、誤りとまでは言ひ切れませんが、戰前の楷書書體や中國語・韓國語の楷書書體と同じく「一點にくねる形」で統一出來ないものでせうか。

Q.「正字」とは、それ以外の字形を「誤字」と勝手に決めつけるものですか。
A.「正・誤」の「正」ではなく、「正式・略式」の「正」、「正三角形」など「基本形」を意味する「正」と同じです。本フォントで基本字形として採用した字形以外を誤りと決めつけるものではありません。

Q.「舊字は過去の文獻の爲のもので、現代語の爲のものではない」が私の持論で、現代語に舊字を使ふ事に贊成する「國語問題協議會」や「文字文化協會」の主張には同意しないのですが、過去の文獻を印刷する爲にこのフォントを使用できますか。
A.「IPAフォントライセンスv1.0」の範圍內であれば、勿論自由な立場でご使用いただけます。

Q.「暫定」とありますが、いつ「暫定」の名前が取れるのですか。
A.元のIPAmj明朝に入つてゐる字の範圍で「正字」の字形を選定したので、たとへば「違」と「芽」でそれぞれ「ヰ」の部分の形が違ふなど、文字部品の形が字によつて不揃ひな事もある(もし今後揃へたければ作字が必要)といふのが、「暫定」と名附けた理由の一つです。しかし、「正字」なのに「暫定」といふギャップが面白いのと、「正字」の「正しさ」とは「キツチリ規範が決まつてゐて、それを少しでも外れると間違ひになる正しさ」ではなく「許容範圍のある正しさ」といふ事を暗に傳へられるので、當面は敢へて「暫定」の名を殘さうと思ひます。

Q.「暫定正字ゴシック」フォントはありますか。
A.所謂康熙字典體の字形データは「IPAmj明朝」を基にしてゐますが、このフォントのゴシック版は現在存在しない爲、「暫定正字ゴシック」フォントの制作豫定は今のところありません。

Q.文字の太さは一種類だけなのですか。
A.基にしたフォント、「IPAmj明朝」の文字の太さが一種類だけなので、「暫定正字明朝」フォントも太さは一種類だけです。

Q.文字コードと字形のマッピングで、氣に入らない部分があります。自分で直す事は出來ますか。
A.「TTX」といふソフトを使ふと修正可能です。「暫定正字明朝」も、TTXのWindows版であるWinTTXで作成してゐます。「暫定正字明朝」の配布ファイルには、IPAmj明朝のTrueTypeフォントファイルを基に「フォント名」「マッピング」等を修正するためのソースファイル(*.ttx)を入れてあります(ZanteiSeijiMincho_(バージョン名)_Source.zipのファイルの中にあります)。Windowsをお使ひの方の爲に、ipamjm.ttfと*.ttxを基にZanteiSeijiMincho.ttfを作るipamjm_to_seijim.batといふバッチファイルも附けてあります。これを參考に、必要な箇所を修正してオリジナルのフォントを作成して下さい。なほ、改造版フォントを再配布する場合は「IPAフォントライセンスv1.0」に從つて下さい。

Q.舊字フォントとして「Oradano明朝・癸未明朝」「五月雨明朝」「馬酔木明朝」「三式明朝」「文字鏡契冲明朝」と澤山ありますが、何故敢へて新しいフォントを制作したのですか。
A.所謂康熙字典體としてどの字形を選定するかは「(イ)戰前の活版印刷の實態に倣ふ」「(ロ)字典的に正しいと思はれる字形を選ぶ」といふ二つの方法があります。勿論、100%(イ)、100%(ロ)とは限りません。「原則は(ロ)だが一部の字形は印刷の傳統として使用實態が殆ど無く馴染みのない爲(イ)とする(例:「駄」「梨」など)」といふ立場もあり、國語問題協議會會報『國語國字』の印刷に使つてゐる漢字字形はこの方針を採用してゐます。販賣終了した市販ソフトの附屬フォントで、新字版がなく正字・新字を混ぜて使ふ事の難しい「文字鏡契冲明朝」の後繼フォントを開發するにあたり、「文字鏡契冲明朝」と字形差の大きなフォントではなく、或程度近いフォントが必要だつた爲、新しいフォントの制作を開始しました。

Q.所謂康熙字典體として明らかに間違つた字が表示されてゐるやうに見えます。
A.(「どの字かは教へないけど間違ひだらけです」ではなく)具體的にどの字にどんな問題があると思はれるのか、文字文化協會、または制作元の國語問題協議會へ御一報ください。正字(いはゆる舊字)に限らず、もしかしたら同じ文字部品を持つ表外漢字にも共通する問題が隱れてゐるかも知れません。ですから、有益な問題提起は、正字で文書を作成する人に限らず、新字で文書を作成したりフォント作成やレタリングをする總ての人にもきつと役立つ參考情報となるでせう。

Q.このフォントでは「間」の字が「閒」の字で出るのですが、間違ひですか。
A.戰前の書籍では「間」の字が「間」のまま印刷される事も多かつたのですが、康熙字典では『正字通』(別の漢字字典)に基づき「間」を「閒」の俗字としてゐます。藤堂明保編『学研漢和大字典』等、漢和辭典でも「閒」が正字、「間」が俗字とされてゐます。また、國語問題協議會會報『國語國字』は、初期の號は「間」で印刷されてゐますが、恐らく昭和54年3月の第102號邊りから「閒」で印刷されて(この時代は活版印刷でした)今に至るので、それにも倣つてゐます。

問合せ先

制作者:國語問題協議會
頒布者:文字文化協會
 元々は國語問題協議會會報『國語國字』の組版を效率化する爲に制作したものですが、國語問題協議會や文字文化協會の國語國字問題に關する主張に同意するか否かとは關はりなく、樣々な文書に自由な立場で御使用ください。