漢字基本字形・正字 basechar・authen

平成漢字基本字形集

国語施策による漢字の制限や字形の変遷と、コンピュータ環境の進展による多漢字環境の出現のなかで、漢字利用の混乱が甚だしい。本書は、自分の用いる漢字が類似字形群の中でどの位置にあるかを見つけ、どの漢字を使うかを選ぶ際に有用となる、漢字字形の字書を目指すものである。
「JIS X 0208:1990」で規定された漢字6,355字を出發點とし、JIS第三第四水準漢字、ユニコード(CJK統合領域、エクステンションA)の中から傳統的字體などを表現するにふさわしいものを選択し、5,700種8,500字を收錄している。見出し字には『今昔文字鏡』明朝體文字を採用し、排列は『康煕字典』式214部首に分類による。 『康煕字典』、特にその「道光版」の字體を尊重し、日本における實情も加味した基本字(傳統的印刷用字體)を示した。またこれに戰後の略字を中核とした通用・異體字を對照させた。
部首ならびに總畫数檢索の他に、旁を分類した「つくり索引」を設け、關聯字の檢索を容易にするとともに、近年の電子機器においても活用できるよう、ユニコードや文字圖形番號(ISO/IEC10036:今昔文字鏡所收)を附している。
また主として昭和21年を境とした字體字形の變化を比較對照した「新舊字體對照表」と新舊字體の変遷について理解を深めるための詳細な解説も収載している。
漢字学習の補助資料として、また漢字フォントデザインの基本資料としての活用が期待される(2016年9月電子書籍版刊行)。

 

監修者の辭(抜粋)
公益財團法人斯文會會長 石川忠久
本書は、漢字の成立ちを明示するものとして再評價された康煕字典體を「常用漢字」に對しても適用し、傳統的明朝体の基本字形を提示し、そこから派生する異體字や、略字體、別字を明示しようしてゐる。さらにこの機會に戰後の學術的成果、特に甲骨文字の硏究を蹈へた字形を「正體」として提示してもゐる。これによつて漢字の字形の混亂に齒止めが掛けられれば寔に幸ひである。
唐の時代に、字形のための辞書『干祿字書』が作られた。八百字ほどの楷書を採上て異體字を整理し、正、通、俗に分類したもので、公式の文書、科擧の試驗に用ゐる字形を定めた。さまざまな字形が使はれ、異體字が増えてきた時代の、實用の書だつたのである。この『平成漢字基本字形集』は現代の『干祿字書』を目指してゐる。自分の用ゐる漢字が類似字形群の中でどの位置にあるかを見つけ、どの漢字を使ふかを撰ぶ時に必ず頁を繰る、實用の辞書として役立つことを切に願つてゐる。

 

前書(抜粋)
明治時代に入り、木版印刷の時代に比べ印刷技術がすすみ、教育も普及するやうになつて印刷部數が増大したことから、使はれる漢字の字種も多くなり、伴つて字形も多種多樣になりました。そこから、一般人の知つておくべき漢字はどの程度であるかが調べられ、約3,000字が妥當とされました。そのやうな基本漢字の選擇は既に明治時代からあり、大正時代を經て昭和に入つてから30年代には、國語問題協議會が3,444字の『教養としての基本漢字表』を世に問うてゐます。當時はまだワープロは出來てゐませんでしたが、その後電腦技術が大發展し、何萬字といふ漢字が規格に組入れられ、誰でも扱へる時代となりました。「本字形集」は、その時代の動きをとらへその「漢字表」を全面的に改訂し5,700字の基本字形を示したものです。