
■梵字(悉曇)とは
釈尊は文字はお読めになりましたが、教えを文字では残さず、弟子達が説法を口述で復唱して伝えたとされています。
しかし西暦一世紀ころから始まる大乗仏教は初期から文字を使った経典を残しています。
その後三世紀のアショーカ王がその領土内に多くの磨崖碑や石柱碑に勅文を刻ませ、その中に悉曇文字の源である文字が見られるとされています。
六世紀には、シッダマートリカー文字として中国に伝えられ、「形・音・義」が纏められて梵字学が成立、悉曇文字として固定し、それが7世紀頃には日本にも伝えられました。
梵字が確実に日本に紹介されたのは平安初期の最澄、空海によってですが、その後も円仁を初めとする入唐八家等の留学僧によって一段と多くの梵字資料が将来されて研究も盛んとなりました。
しかし、遣唐使の廃止以来輸入が途絶えて沈滞し、同時に大陸での梵字も廃れて行きました。
あらたに梵学が興隆したのは江戸の初中期です。
浄厳や澄禅が活躍し、18世紀には慈雲が浩瀚な梵学資料を集めた上で、経典解読の道を開きました。
梵字が僧侶以外の人の目に触れるようになったのは、卒塔婆やお守りに書かれたものであり、高野山の町石といった石塔や佛教関係の工芸品でも梵字を見かけるようになりました。
■「梵字鏡」とは
「鏡」は物事の形、姿を照らして明らかにするものであり、そこから模範といった意味が生まれてきました。
更には、歴史を写すものとしての鏡、鑑の意味も持っています。
この「梵字鏡」は、今までに使われたことのある梵字約12000字を収録して、梵字全体の姿を明らかにしようとするものです。
現在、「梵字鏡」には二種あります。
- 「成就吉祥章」
「悉曇十八章」に相当する梵字及び多くの異体字を含む12000字を印刷した書籍です。
- 「湧出窓 for Windows」
成就吉祥章の梵字をフォントとして全部収めた上で、検索や写経といった様々な応用のできる、 Windows版の「湧出窓」CDです。
「湧出窓」では、ローマ字、かな、漢字から、梵字や種子、真言、陀羅尼などが呼び出せ、経文としては、「梵漢阿弥陀経」が収録されています。