漢字文化をデジタル環境で継承しようとしても、個別ローカル処理では対応できない「外字・異体字」問題が残る。文字コードだけでは解決できず、印刷・出版の様々な現場で運用上区別しなければならないこれらの文字については、その「文字図形」の識別と、現場が必要としている「表現したい字形を一意に、しかも簡単に指定できる作業環境」を、「文字番号(文字列)と文字図形が1対1で対応する」ルールを持つ「文字図形情報共有基盤」を参照することで解決ができる。
ローカル処理の文字埋め込みのみでは、将来その文字図形の再現ができない恐れがあるが、番号を付けることで精確な文字図形がいつでも参照できるようになる。
文字コードとして国際的な標準とするには長い時間を要する。そこで考えられた国際規格が、ISO/IEC 10036(Information technology – Font information interchange – Procedures for registration of font-related identifiers)である。識別子(文字の図形番号)とそれが示すグリフの1対1対応が確保される仕組みで、この国際規格を翻訳した日本工業規格がJIS X 4165:2002「フォント関連識別子の登録手続き」である。
ローカル処理の文字埋め込みでは、将来その文字図形の再現ができない恐れがあるが、番号を付けることで、精確な文字図形がいつでも参照できるようになる。
ISO/IEC 10036 Registration Authority for Font-related Objects 頁へ
文字に番号を付与し、文字を整理し参照を容易にしようという方法は、従来より「漢和辞典」などの辞典番号(最大規模の大修館書店『大漢和辞典』約5万字)があり、コンピュータ処理以前から普及していた。
「文字鏡研究会」が収集し6桁の番号を付与した「今昔文字鏡(現在約16万字収載)」の「文字鏡番号」は、情報処理学会が試行標準として策定した「文字図形のユニークさを識別するための手順」であるIPSJ-TS 0002:2004「文字図形識別情報」の参照実体として2002(平成14)年に公表され、その文字図形(SVG画像フォント)とともに公開されている。
なお、「文字鏡研究会」は2019年2月に解散しましたが、研究会サイトで配布していた文字鏡フォント類は、Internet Archive上にあるアーカイヴから入手でき、従来のライセンス条件で継続して利用可能です。
[文字鏡研究会配布版の文字鏡フォント最終版(Mojikyo Character MAP ver. 4.00付き)])
Word文書、Excel文書内を扱う際に、大変便利な「文字鏡文字と文字図形番号を変換するフリーツール」が公開されている。
文字鏡文字表記形式(&M012345;)の番号と文字鏡フォントを相互に変換するアプリケーションで、アドイン設定する必要がなく、変換する文書の選択は起動したアプリにある[開く]、[閉じる]ボタンの操作で行えるので、入稿原稿内に「文字鏡TTFフォント」が埋め込まれている際に、その所在を容易に確認できる。このアプリの利用により、印刷書籍、電子書籍(SVG画像フォントを使う際には、この番号をベースに参照用SVGデータ作成する)制作の作業効率が大幅に改善することが期待できる。
アプリケーションの開発は、文字鏡研究会、インデックスフォント研究会で活動されている望月英男氏( Hideo&Kayokoソフト工房)で、ご好意によりリンクの許諾をいただいた。
Excel 文字鏡変換 1.00
私達は文字文化の発展を促進する活動を行ってまいりました。このたび印刷業務における漢字使用の作業能率を向上させることを目的として、漢字字形に番号を付した文字図形の集合を日本工業規格に提案することを企画しました。
そのため有識者の方々に御依頼申上げて参集願い、「文字図形番号標準化検討委員会」を発足させることといたしました。
当検討委員会では文字図形番号を付した文字図形集合を標準化することによる問題点を審議し、規格提案内容のほか、具体的な運用方法や規格利用者への支援方法などを検討します。
非営利活動法人文字文化協會 理事長 谷田貝常夫
2008年4月08日 委員会第1回(PDF) 2008年7月25日 委員会第2回(PDF)
漢字は、その歴史的、地理的背景から甲骨文、古字、仏字、国字など多様な世界を持っている。その多くは文字コードにはないが、文字図形番号を付与することで、字形情報の相互交換・共有化が可能となる。
印刷出版の現場では、常に既存の文字コードやフォントの実装環境では取扱いが出来ない文字が発生する。その場合、従来はその文字のフォントや文字画像をローカルで作成し、貼り込む手法が一般的である。しかし、それは当面の印刷・表示のための便法であって、将来にわたってその字形を共有・保存できる保証はない。
それらの文字図形に番号を付し、その番号を共有する基盤があれば、その文字のデータに文字番号を付与して処理することで、解決が図れる。
文字文化協會では、2014年東京国際フェアで、印刷出版現場の文字図形番号活用のためのセミナーを開催した。